G議長は二○○五年二月一七日、下院金融サービス委員会の公聴会で、住宅バブル金融政策は常に間違うリスクを伴っているわけであり、実際のところ、同議長が任期一八年半の間に実施した政策が全部最善だったわけではない。
IT株式バブルに対する対応についても、G議長は最善だったとは本音では考えていないはずだ。
にもかかわらず、政策実行後は決して誤りを認めないのは、金融政策およびFRBに対する信認が揺らぐことを警戒していたのだろう。
Gは二○○二年八月三○日のジャクソンホール・シンポジウム(カンザスシティ連銀主催)で、株式バブルの予測が困難な理由として、「数百万人もの株式投資家の予測にわれわれは勝てない。
彼らはわれわれよりも優れている」と語った。
その非常に謙虚な姿勢に共感を抱いた人々も多かったが、将来、バブルが発生しても、また、破裂するまで待つというのだろうか?と一部のマスメディアは強く非難した。
FRBだけで一○○人以上の博士を抱え、同議長をして世界最高の経済調査機関と言わしめている組織を率いる人物が発する言葉としては、責任放棄とも受け取られかねない危うさをしのんでいた。
G議長の住宅バブルに対する発言とIT株式バブル形成過程での発言を比べると、鮮やかなコントラストが浮かび上がる。
ITバブル形成過程の九九年六月の発言は「バブルの認知は不可能であり、破裂後の治療が重要」という趣旨だった。
二○○五年の住宅バブルあるいはフロスに関する発言は、「全国的なバブルではない。
また、過去のバブルのような崩壊はない」と、バブルを否定するものだった。
これは、九六年一二月の「根拠なき熱狂」で、真剣に問い掛けたことに対し、議会が猛反発した経緯が影響しているはずだ。
ここで、住宅バブルに対して、同じように警告じみた発言をしても、非難される恐れがある。
そこで、まずバブルではないと断言。
そして、形勢が危うくなると、今度は警告と受け取られないようなソフトな「フロス」という言い回しを使った。
「フロス」は、宅価格が高騰する地域が広がるにつれ、地域的バブルと主張しづらくなると、今度は「フロス上に浮かぶ小さな泡粒の固まりと解説した。
バブルにせよフロスにせよ、中身がないのは同じである。
M社が二○○五年六月時点で調べたところ、全国五○大都市圏のうち約半分で異常な住宅価格の高騰が観測されたという。
地域的なバブルと主張するには、あまりにも大きな広がりを見せている。
カプチーノコーヒーのほんのりと甘い泡粒が連想され、この発言を非難する者は誰もいなかった。
それどころか、コーヒータイムに格好の話題を提供する形になり、G議長の人気がますます高まった。
しかし、このほんのりと甘いフロスに乗せた警告は、住宅市場に対してある程度の警戒感を抱かせたようだ。
ただし、FRBの調査報告「中央銀行の対話、それはなぜ重要なのか」シニアエコノミスト共著、二○○三年五月、カナダ中央銀行主催の会議に提出)が指摘する通り、「資産価格高騰に対して当局者の発言は効果がない」とすれば、G議長の「フロス」発言の効果は一時的なものにとどまる可能性もある。
仮に住宅市況の減速が続いた場合は、フロスのピークにたまたまG議長が発言したにすぎなかったということになろう。
B議長と資産バブル続いて、B・Bの資産バブルに対する見解を見てみよう。
一九九九年のMとの共著による論文では、物価の安定と金融の安定という両方の目的を達成するための、資産価格変動一方、九九年の論文とは異なって、FRB理事の立場になったBは、二○○二年一○にも対応するインフレ・ターゲットが主張されている(当時Bはプリンストン大学教授)。
その枠組みの下では、資産価格ブームの時には金利は引き上げられ、資産価格破裂の時には金利は引き下げられるという。
その結果、金融パニックの可能性を低減させられるとされる。
そして、日本のデータを使ってバブル期前後の望ましい短期金利を推計している。
彼らのモデルによれば、八八〜九一年にかけて、日本では資産価格のロケットのような急上昇や生産の拡大があったにもかかわらず、日銀が実際に誘導したコールレートは彼らのシミュレーションよりも大幅に低かった。
試算では八八年半ばにコールレートは八%前後(実際は四%前後)、八九〜九一年は一○%前後(実際は四〜八%程度)に引き上げる必要があったという。
逆に九二〜九六年半ばにかけては、日銀の金利引き下げは十分ではなかった。
シミュレーションが示す短期金利を日銀が実践していれば、株式市場のブームを抑制し、その後の暴落を緩和できたという。
もっとも、八七年一○月のブラックマンデー後である八八年に日銀がコールレートを八%に引き上げ、八九年にさらに一○%へ引き上げることは、実際にはかなり激烈な"バブル潰し”政策となる。
しかも、当時の消費者物価指数は未だ落ち着いていた。
その状況でコールレートを八%に引き上げることをインフレ・ターゲットの枠内の政策と説明しても、政治からの独立性がFRBほど高くない日銀の場合、現実には理解を得ることは困難だったかもしれない。
資産価格ブームによって生じる不安定性を和らげようとするためには、金融政策は有効な道具ではない。
FRBは資産市場に対してではなく、経済全体に対して金融政策を使うべきである。
FRBはバブルに対してどの程度アグレッシブになるべきか?という点に関し、議論は二つのグループに分かれている。
第一のグループは、「バブル抑制戦略」を提唱している(バブル発生を早期に察知して、緩やかにバブルを押さえつける戦略)。
この穏やかな一派は、真剣な研究者の中で大勢を占めている(前述のBISのPの提唱もこれに含まれている)。
しかしながら、理論的にも経験的にも、そのようなスムースな対応は資産価格のダイナミクスにおいて十分に機能しないだろう。
もしバブル膨張過程で投機家が年率一○%、一五%、二○%、あるいはそれ以上のリターンを期待していたら、短期金利の○・五%の引き上げは彼らに株式投資の再考を促すだろうか。
第二のグループは、「攻撃的バブル潰し戦略」である。
彼らは、FRBが威勢よく積極的に利上げを行って、資産価格の潜在的バブルを取り除くことを望くし」。
月一五日の講演で「バブル潰しのために急激な金融引き締めを発動するべきではない」というポイントを強調している。
おそらく、前述の二○○○年のITバブルへ対応した際のFRBの教訓を踏まえた面もあるだろう。
FRBの金融政策に対する私の提言は、次の格言に要約される。
「仕事には適切な道具を使う以上のような見解は、現在では多くのFRB関係者の間で、原則論として比較的共有されている模様である。
しかしながら、監督、検査等によるミクロレベルでの規制において不幸にも抜け道が存在し、バブルと推測されるブームに現実に直面してしまった場合は、中央銀行はどのように対処すべきなのだろうか?現にB議長は、G前議長から"負の遺産”である住宅バブルを引き継いでしまっている。
次に示すように、G・ニューヨーク連銀総裁は最近の講演で、苦悩しながらも資産市場に向き合わなければならないとする現実的な判断を示している。
んでいる。
しかし、この提案は私に強い心配を抱かせる。
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